ワイドギャップ半導体を用いた新機能センサー

MEMSとは、Micro-Electro-Mechanical Systemsの略で、半導体微細加工技術を活用した超小型機械部品・デバイスを意味しています。主にSiや酸化膜などの材料に微細加工を施すことにより、圧力センサー、加速度センサー、回転ジャイロ、インクジェットプリンタヘッドなどの応用製品が実用化されています。従来、MEMSは機械工学の専門家が取り組んできましたが、電気電子工学の視点でMEMSを見ると、これまでにない切り口での展開が見えてきます。半導体材料、物性制御の専門家としての持ち味を生かしながら、新規デバイスの提案を進めてゆきます。

また、次世代MEMSの一つの大きな要求として、耐環境・耐腐食性・高温動作が挙げられます。自動車のエンジン周りでの応用、航空、宇宙応用、化学・生物関連応用などでこのような要求が高まっています。本研究室では、これまでのSi系材料に加え、耐熱性や耐食性、機械特性に優れたSiCや、大きな圧電効果を持つAlNなどの材料も使ったMEMSデバイスの実現を目指した基礎研究にも取り組んでいます。

現在進行中の具体的なテーマとして以下のものがあげられます。

  • 溶融KOHによるSiCの異方性エッチングとSiC MEMS作製への応用
  • 光電気化学エッチングによるSiCへの立体構造形成
  • ウエハー融着を活用した分極構造制御新規ワイドギャップ半導体デバイスの実現
  • ワイドギャップ半導体の熱光学効果を利用した光MEMS
  • GaN/Siウエハーを用いたMEMS作製

(発表論文の例)

N. Watanabe et al., “4H-SiC pn photodiodes with temperature-independent photoresponse up to 300℃,” Appl. Phys Exp., vol. 5, 094101 (2012).

K. Adachi et al., “Single-crystalline 4H-SiC micro cantilevers with a high quality factor,” Sensors and Actuators A, vol. 197, 122 (2013).

K. Sato et al., “High-temperature operation of electrostatically-excited single-crystalline 4H-SiC microcantilever resonators,” Mater. Sci. Forum, vol. 821-823, 914 (2015).

  • 単結晶SiCカンチレバー

    伝導型選択エッチングを活用して作製した単結晶SiCカンチレバー(片持ち梁)の電子顕微鏡写真

  • 単結晶SiCカンチレバーの共振特性

    作製した単結晶SiCカンチレバーの共振特性(350,000という高いQ値を達成)