木本教授からのメッセージ

1. 学部1-3回生の方へ

 

< 研究室配属後の学び >
ほとんどの皆さんは、今まで基本的には定められた内容を勉強してきたことと思います。受験勉強、定期試験(過去問?)、実験・実習・演習のレポート・・・、どれも基礎科目として大変重要なのですが、中にはつまらないと感じたこともあるのではないでしょうか。この数式は覚えないといけないのか、試験でこのような説明や図を書くと減点されるのかなど、本質ではないところにエネルギーを注いでいる人が多いように見受けられます。

しかし、研究室配属の後、皆さんの「勉強(学び)」のスタイルは、以下のように180°転換します。

研究は、未知の荒野を開拓することに似ています。荒野を開拓するとき、基礎学問を学んでおくことが強力な武器になります。このような勉強において、数式や定義を暗記することにほとんど意味はありません(単に暗記したものは必ず忘れます)。大事なのは、深く学び、納得して身に付けるかどうかです。例えば、物理現象を記述する数式なら、

  • どのような仮定を用いて導出されたのか?
  • 各項が意味する物理は何か?
  • その式が成立する場合と成立しない場合を明確に説明できるか?
    (例えば、半導体工学の最初に習う pn = ni2 が成立するとき、成立しないときを論理立てて説明できますか?)。
  • その数式を元に、どのような現象を解析、予測できるのか?

などに着目して考えて下さい。
このように、教科書や文献を読む勉強においても、今までとは異なる姿勢が求められます。大変時間のかかる勉強ですが、このようにして身に付いた学問は、「暗記しても忘れる」断片情報とは別次元のエネルギーとなります。

どの研究テーマに取り組む場合も、関連する基礎学問を身に付けることは大変重要ですが、皆さんの本業は勉強ではなく研究です(皆さんは研究者の卵)。研究室配属後に始まるメインの「研究」は皆さん自身が考え、進めるのです。もちろん、最初の方向付けは教員が提案しますが、ある程度軌道に乗ったら、皆さんが目標を設定し、それを実現するための道筋(勉強や研究の進め方)も自分で考え、デザインします。その目標を達成するために勉強すべきことは無数にありますし、そこに至る道筋もたくさんあるでしょう。最短と思われる道を進むもよし、面白そうなものを発見したら道草するもよし。このように、自分で自分の力を向上させながら(自己研鑽)、未知の荒野を開拓することが、研究者としての一歩です。

< 研究の進め方 >
上で「研究の進め方も自分で考え、デザインする」と述べました。私達の研究室では、教員とのミーティングを定期的・頻繁に実施することをあえて避けています。これは、学生さんに自立を促し、多少回り道でも自分で考えて前進して欲しいからです。ミーティングで教員に指示されたことをこなす日々を送るのではなく、自分で考え、自分の道を切り開いてほしいのです。突然、未知の世界に踏み出すと学生さんは困りますので、教員は学生の皆さんが困難に直面して相談に来てくれるのを(楽しみに)待っています(成果報告を待っているのではありません)。したがって、教員とのミーティングの頻度は、学生さんによっても違いますし、同じ学生さんでも研究フェーズによって異なります(3-5日に一度の場合もあれば、1-2ケ月に一度の場合もあります)。

皆さん、自分の力を試してみませんか。今までのように、敷かれた軌道を走るのではなく、未知の世界に挑んでみませんか。半導体に絡む新しい物理現象の発見やメカニズムの解明、新しい機能を有する半導体デバイスの考案と実現…、どれも一朝一夕にできるものではありませんが、若い皆さんのエネルギー、情熱とたゆまぬ努力があれば必ず可能です。皆さんの挑戦の行方には、エネルギー・環境問題への貢献、情報化社会の発展という明確な目標が見えています。

本研究室のトップページに記したように、現在「半導体」は重要で新しい社会ニーズに応えるべく、活気に溢れる学際分野となっています。このような要求に応えられる半導体デバイスとは? 当然、従来の延長線上にはありません。私達は多くのアイデアを出し合い(学生さんのアイデアが多い)、日々、その夢の実現を目指して研究にいそしんでいます。社会に直接貢献できる研究テーマだからこそ、より高いモーチベーションを持って研究に取り組むことができます。国内外の学会で新しい成果を発表すると、大学研究者と企業技術者の両方から称賛と激励をもらうことができるのも特徴です。

なお、誤解のないよう若干補足します。京都大学で行う研究ですから、重要なのは新しい学術の探究や学問の体系化です。若いときに基礎学理の研究を究めた人は、社会に出て全く異なる分野で仕事をすることになっても、何の恐れもなく活躍できるでしょう。当研究室では、幸いにも学生時代に取り組む研究テーマが「実用化に直結する基礎学理」である点が特徴と言えます。

最後に、私は心底から京大が好きです。京大独自の自由の学風と反骨精神を尊び、物理や半導体に興味のある皆さんと一緒に研究するのを楽しみにしています。

木本教授からのメッセージ(続き): 2. 学部4回生、大学院生、若手研究者の方へ

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