数年前、私は皆さんと同じように研究室配属に頭を悩ませていました。どの研究室も魅力的に思える一方、研究内容の深いところが理解できていないせいか、絶対に携わりたい研究に出会っていたわけではありませんでした。それどころか、講義室に座って授業を聞いていた今までの生活から変化していくことに、漠然とした不安を抱いていました。
皆さんは過酷な受験戦争を乗り越え、大学に合格し、勉強・生活を続けていると思いますが、これまでの成功体験において、自分の置かれている”環境”が果たした役割は大きいのではないでしょうか。”環境”というのは色々解釈できる言葉だと思いますが、例えば切磋琢磨できる友人がいることも”環境”の一つだと思いますし、生活のことを気にせずに勉強できているのであれば、それも良い”環境”と言えると思います。大学の大きな図書館に行けば何でも本が揃っていて調べ物ができる、それも充実した”環境”でしょう。
大学院に進学することも考えると、短くない研究生活を有意義に過ごすには、研究テーマ・分野ももちろん大切ですが、卒業と共に変わっていく方が少なくありません。私は、良い”環境”で社会に出た後も通用する普遍的な力を身に付けることがそれ以上に大切だと思っています。
では良い”環境”とは、一体何なのでしょうか。ここは京都大学ですので、どの研究室を選んでも最先端の研究に携わらせてもらえると思います。その意味で、あまり違いは無いのかもしれません。敢えて言うのであれば、修士課程を卒業する学生には以下の能力を身に付けて欲しいと思って指導しています。
- 課題を適切に設定し、解決までの道筋を考案する能力
- 人との対話を尊重し、情報の取捨選択を自ら行う能力
- 伝わる文章・資料作製とプレゼンテーション能力
当研究室では、半導体のあらゆる物理に関する研究を広く行っています。半導体物理は非常に面白く、奥が深いものですが、未知の現象を明らかにするには様々な実験や計算が必要です。大変なこともありますが、一つの成果としてまとめ、論文執筆や国際学会での発表を是非経験してもらいたいと思っています。
冒頭の話に戻りますが、悩み続けた3回生の私は結局どうしたのでしょうか…。自分が思う良い”環境”が整っていそうな研究室を、結局、直感で選んだのでした。自分にとっての良い”環境”とは何なのか、少し考えてみてください。