木本恒暢教授が紫綬褒章を受章

令和7年春の褒章において、木本恒暢教授が「炭化珪素半導体材料および電力用素子の開発」に関する功績(発明改良)により紫綬褒章を受章しました。 紫綬褒章は「学術芸術上の発明改良創作に関して事績の著しい者」が授与対象です。
木本教授のコメント:
この度は身に余る光栄な機会を賜り恐縮しております。これも偏に、長年に亘って研究室のスタッフや学生さんと一緒に研鑽を積む機会に恵まれたお陰です。今後も名を汚さないよう一層、精進いたします。

業績概要(一部抜粋)

炭化珪素半導体材料および電力用素子の開発

現代社会の重要なエネルギー源である電力は、発電から消費の間に複数回の直流―交流の変換が行われている。従来、この直流―交流変換には珪素(Si)半導体を用いた電力用素子が使われてきたが、変換の際に発生する電力損失の低減が喫緊の課題であった。
氏は、この問題を克服するため、炭化珪素(SiC)半導体に着目し、SiCを用いてSiに比べて桁違いに低損失の素子を世界で初めて実証した。また、氏はSiC電力用素子の作製に必要な多くの基盤技術を確立すると共にSiC半導体の基礎物性を明らかにし、産業界に移管した。例えば、民間企業と共同で世界初のSiCトランジスタの実用化に成功し、民間企業と共同開発したSiC半導体製造装置は現在、当該分野の標準装置となるなど、SiC半導体材料および電力用素子の発明と産業の創出、さらには学術分野の開拓に貢献した。
本開発により、高品質のSiC半導体材料および高性能SiC電力用素子の実用化に大きく寄与した。氏が開発した技術を用いて、国内外の多くの民間企業がSiC電力用素子の製造を行っている。従来用いられてきたSi素子をSiC素子に置き換えることにより、電車の走行電力が約3割低減、電気自動車の航続距離が約1割増大、太陽電池用パワコン、エアコン、エレベータ、産業用ロボットや電源の電力損失が約2~5割低減するなど、産業の発展と顕著な省エネルギーに貢献した。